その男、裏切り者につき

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「え?部長さんなんですか?わかーい!」 「そうそう、アメリカ赴任から一年前に帰ってきたんだよ」 僕が話を広げられるようフォローを入れてやると、朝比奈の隣に座った女の子が感心したように手を合わせた。 「すごいですねー!英語ペラペラ?」 「まぁ、日常で困らない程度は......」 愛想はなくても、女性を蔑ろにはできないジェントルな朝比奈は訥々と答える。 すると、女の子が「そうなんですねー」と言いながら朝比奈の腕にそっと手を置いた。 それから確かめるようにそこを擦る。 「部長さん、けっこう鍛えてる!いい感じでメグミの好みかも」 「め、メグミ……!?」 朝比奈がビクリと震える。 だって、メグミって前の奥さんと一緒の名前だ。 たじろぐ姿につい耐えきれず破顔してしまった。 「あはは!」 「鳥居!」 腹を抱えて笑う僕に朝比奈が怒るけど、赤くなった顔じゃ全然怖くない。 やっぱり、連れて来て正解だった。 前の奥さんと同じ名前の子が隣についたのは予想外だったけど、ますます楽しい。 その晩、『メグミちゃん』からの猛攻撃にたじたじになる朝比奈はかなり面白くて、普段の凛々しい鬼部長の影もなく。 やっぱり僕を飽きさせなかった。
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