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「おい」
「あ、何?」
「何じゃない!」
翌日、出社したところを呼び止められて振り返った先に朝比奈が鬼のごとく厳めしい顔で立っていた。
大体、言いたいことはわかっていたけど、はぐらかしたらますます怒り出す。
廊下で立ち話も何だから、とりあえず僕たちは営業部を通りすぎていつもの喫煙室に入った。
朝比奈は禁煙しているから、僕だけが吸うのもなと二人ともただソファーに腰を下ろす。
「本庄くんに怒られた?」
予想していたことを口にしたら、当たりと言わんばかりに朝比奈がムッと顔をしかめた。
「怒られてはいないが、無言で睨まれた」
「バカ正直にキャバクラ行ったって話したの?」
「だ、だって、『どこのお店行ってきたの?』って聞かれたから……疾しいことはしていないし、隠すほうが怪しいだろ」
「そうだけどさー。正直に告白されても許せないものは許せないからねぇ」
「そうか……ってそもそもお前があんな店にだな!」
「でも、みんな喜んでたよ。これで君の人気も少しはよくなったんじゃないかな。取っつきにくさも軽減されたはずだよ。それにほら、君『幸せすぎて怖い』って言ってただろ?こういうスリルくらいないと夫婦仲マンネリしてくるしさ。本庄くんもハラハラドキドキして……」
「させんでいい」
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