その男、裏切り者につき

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僕は内心そう思いながら上着を脱いでネクタイを緩めた時、背後のドアが開く音がした。 振り返ると、白地に小さなピンクのウサギがたくさん散らばったパジャマを着た娘の姿。 三歳になる娘は眠りから覚めてしまった目を擦りながらちょこんとそこに立っていた。 「舞、起きちゃったの?」 「……パパの声、したから」 妻の言葉にこくりと頷く。 きっとトイレで起きたところに僕の声がしてリビングに来たのだろう。 「パパ」 と甘えた声で僕のところに近づいてくる。 このところ、僕の帰りが遅かったから恋しいようだ。 僕は足元に抱きつく娘を抱き上げた。 「目覚めちゃったか。じゃあパパが本でも読んであげるね」 「やったー」 きゃっきゃっと喜ぶ娘は眠気が飛んでしまってご機嫌だ。 何か言いたげな妻を残して僕は子供部屋に向かうと、スタンドの電気をつけてベッドに舞を降ろした。 「どの本がいいかな」 「うさぎしゃんのやつー」 「また?舞はこの本が好きだね」 「うんっ」 本棚に収められた絵本の中から国民的キャラクターの白いウサギの絵本を手に取る。 それを娘のベッドの傍らに腰を下ろして、ゆっくりと読み上げていった。
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