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「あー、どうして僕が」
「いいじゃないか。お前の功績が認められたんだから」
「そうだけどさー。僕は平でいるほうが自由でいい仕事できるんだけど」
「サボるの間違いだろ」
朝比奈とそんな会話をしながら会社の近くの店で昼飯を食う。
こういうことも朝比奈が海外に行ってしまうとできなくなるわけだ。
朝比奈を信用しているわけではない。
ただ、こいつとの空間は居心地がよかった。
無愛想だけど、一切無駄なことはせず、裏切りもせず。
関心がなさそうに見えて、実は他人のことに気を回しているのだ、この男は。
少しだけ、何とも形容しがたい感傷染みた思いが過ぎる。
それがあまりにも僕らしくなさ過ぎて笑ってしまいそうになる。
しばらく、退屈になるなぁ。
新しいからかう相手、探さないと。
自分に似つかわしくない湿った気持ちを紛らわすように定食のご飯を一口含んだ。
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