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「な、なによ……」
店用のトイレだから手洗い場と個室で別れているとはいえ、いきなり開けられるとびっくりする。
注意しようとしたけど、彩夏の目が大きく見開かれた状態に私は言葉を呑みこんだ。
「ま、真琴さんが!」
戦慄く唇から発せられた名前に私は彩夏を押しのけるようにしてトイレから出た。
テーブルの横で座り込む真琴ちゃんの姿がすぐに目に飛び込んできて慌てて駆け寄った。
「真琴ちゃん!」
「だ、大丈夫です……」
お腹を押さえながら苦悶の表情で言う。
鼓動が早くなっていく。
私もこれがどういうことなのかくらいはわかる。
陣痛が始まっているのだ。
お、落ち着け。
彩夏はおろおろとしているから私がしっかりしないと。
私はしゃがみこむと真琴ちゃんの背中を擦った。
「病院に行きましょう。私が運転して連れていくから。彩夏はお母さんたちに連絡して必要なものとか用意して」
「わ、わかった」
それから真琴ちゃんを慎重に車まで連れていって後部座席に乗せた。
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