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「すぐ着くからね」
運転しながらもちらちらと真琴ちゃんをルームミラーで確認する。
さっきまで陣痛で苦しんでいたのが今は幾分マシなのか、私に「はい」とちゃんと返事を返してくる。
それでも微笑みの奥に不安が揺らめいて見える。
よりにもよって雪弥がいない時に。
舌打ちしたくなるけど、そんな場合ではない。
私が責任を持って病院まで送らないと。
幸い、大きな渋滞に巻き込まれることなく真琴ちゃんがかかっている病院についた。
病院にはあらかじめ彩夏が連絡を入れてくれていたから、すぐに真琴ちゃんの診察が始まった。
「雪弥はまだなの?」
うちの母がハンカチを握り締めながらもう何度目かの質問をしてくる。
ベッドに横たわる真琴ちゃんの陣痛の間隔がどんどんと狭まってきて、ついに分娩室に。
病院にかけつけたうちの両親や真琴ちゃんの御両親も静かに廊下で待つしかない。
「それが返事がなくて。メールは入れといたんだけど」
「まだ飛行機の中かな」
彩夏が不安そうな表情で腕時計を見ている。
……飛行機ももうそろそろつく時間だけど。
連絡がないことにどうしたのかと思っていると、足音が廊下に響いた。
雪弥かと思って、そこにいた全員がばっと顔を上げる。
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