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その後、真琴ちゃんと赤ちゃんに会った。
生まれたての小さな身体を雪弥は恐々と抱き上げて我が子の顔を見る。
まだ開いているかも微妙な目に、全てにおいて小さなパーツ。
でも、差し出した雪弥の指をしっかりと掴む。
その様に雪弥はふっと泣きそうな、でもとても幸せそうに笑った。
「よく来たね。会いたかったよ」
赤ん坊にそっと囁いた言葉。
近くにいた私くらいしか聞こえていないくらいの声量で赤ちゃんに話しかけた弟。
ここまでの道のりが険しかったのを知っているから感極まってしまった。
そのあと、私も赤ちゃんを抱かせてもらった。
小さくて、温かくて。
軽いはずなのに、その重さがずしりと腕にかかる。
これが命の重みなのかと思うと、自然と口が動いた。
「冬吾くん」
「ん?」
「私、産むから」
赤ん坊から視線を上げると、冬吾くんの丸々と見開かれた目。
その目を見つめてもう一度言う。
「反対されても産む」
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