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「反対?誰が?」
「え?」
きょとんとする冬吾くんに私までつられてしまう。
どういうこと?
だって、妊娠したって言ったとき、
そんなに喜んでなかったじゃない。
「は、反対じゃないの?」
「え?なんで?」
「だ、だって!」
私が大声を出したからか、抱いていた赤ん坊が泣き出してしまった。
慌てて真琴ちゃんに返すと、赤ちゃんは真琴ちゃんの腕の中で徐々に泣き止んで、すやすやと寝てしまった。
私は冬吾くんの腕を引いて部屋から出る。
「だって、喜んでなかったでしょ」
「そんなことないよ。すごく嬉しかったよ。俺と春奈の子だから」
薄暗い廊下でも冬吾くんの真っ直ぐな眼差しには嘘がないことがはっきりと見える。
じゃあ、あの時の陰った表情は?
私が困惑していると、彼がバツが悪そうに頬を掻いた。
「でも、よくよく考えたらリスクもあるじゃない?春奈の身に何かあったらと思うとちょっとね」
確かに私の年齢からして、妊娠、出産のリスクは高い。
それは、私もわかっていたけど、冬吾くんまで考えているとは思わなかった。
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