2881人が本棚に入れています
本棚に追加
子供は嬉しい。
だけど、私も大切。
あれは冬吾くんの葛藤だったんだ。
それを思うと嬉しくて、憤っていたことも恥ずかしくて、私は言葉を詰まらせてしまった。
「あとは、子供が生まれたら春奈はもう俺に構ってくれないと思うと複雑で」
「な、何それ」
「だって、せっかく一緒になれたのに、二人っきりの時間がなくなるのはそれはそれで寂しいというか。君はきっと子供を溺愛して俺のことなんてそっちのけになるよ」
拗ねた子供のようなことを言う。
この人はいつまでも変わらない。
出会った時と同じ。
愛情と優しさで私を包み込んでくれる。
「ふふ」
胸をそっと撫でられるようなこそばゆい感触に自然と笑みが溢れた。
冬吾くんの手を取って、少しでもこの幸せな気持ちが伝わればと両手で包み込む。
「そんなことないわ。ちゃんと冬吾くんの面倒も見ます」
「ありがとう」
私が握った上からまた彼のもう片方の手が被さって包まれる。
「二人でちゃんと育てていこう」
その言葉に涙しそうになる。
ねぇ、あなたのパパは強くて、とても素敵な人よ。
大切に、大切に育てるから。
安心して生まれてきてね。
命が宿ったばかりのおなかにそう語りかけながら、私たちは固く手を握りあった。
最初のコメントを投稿しよう!