陽の向かうほうへ

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「いよいよオープンだね」 お腹が少し大きくなったお姉ちゃんが感慨深く私に言うのに対して、笑顔で頷いた。 「うん、みんなのおかげで」 店を開くと決めた私は、三月で大学の事務を辞めて、お姉ちゃんの知り合いのお店で働きながら勉強させてもらった。 その合間に開店の準備をしていくのは正直大変だったけど、あれだけ大口を叩いて選んだ道だ。 後戻りはできないし、覚悟は決めたのだからと弱音を吐きそうな自分を律して今日を迎えることができた。 資金のほうもかなり困窮した。 お姉ちゃんの店の後を使うとはいえ、内装費やインテリアなどの費用に加え、食材費や光熱費など、当分の運営資金も考えると、当然私の貯金と両親が用意してくれた資金じゃ足りなくて。 銀行に借りようにも、何の保証もない小娘に貸してくれるほど甘くはない。 そうしたら、お姉ちゃんが 「私はもう冬吾くんがいるから安泰だしね。だから使って」 と私に今まで店をして貯めてきたお金をくれようとする。 それを聞いた緒方さんが「春奈と結婚できたのも彩夏ちゃんのおかげだし」とまたお金を出そうとするから、私は慌てた。 断ろうとした私に二人は「いいから」と押し切ろうとして、せめて借りるという形でという私の言葉に不服そうだったけどそれで落ち着いた。 こうしてなんとか出店できる手筈となった。
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