陽の向かうほうへ

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秋の日光が柔らかい日に私の店が始まる。 店の名前は『ひまわり』 夏生まれの私が選んだ。 お姉ちゃんは自分の店が『さくら』だっただけに、もっと別の名前にすればいいのにって言うけど、私はお姉ちゃんのお店あってのこの店だから、少しでも何かの繋がりを残しておきたかったんだ。 今日はプレオープン。 お世話になった人たちを招待して、お祝いをする予定だ。 そのための手伝いとしてお姉ちゃんが来てくれたのだけど、妊婦だからあまり無理はさせられない。 と考えている間にぱぱっと手際よくやってしまうのだから流石というか、見習わないいけないなと思う。 「すみませーん、宅配でーす」 もうすぐオープンの時間が迫る中、店のドアのノックとともに声が聞こえた。 宅配? 今日何か届く手配はしていないんだけど。 「なんだろ」 首を傾げながらも印鑑を持って扉を開ける。 お兄さんが持っていたのは茶色い小包。 それを受け取ると、その差出人に私は目を丸くした。 「お姉ちゃん!」 「何?誰から?」 「夏月だ!」 店に興奮しつつ入ってきた私の言葉にお姉ちゃんも瞠目する。 逸る気持ちを抑えきれず、小包の紙を乱雑に破いてしまう。
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