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私たちの幸せに終わりの兆しが見えたのは私が大学四回生の秋頃。
本家のおばさんが持ちこんできた見合い話からだった。
「春奈ちゃんも来年卒業でしょ?この機会にそろそろどうかと思って」
そう言って、一枚の釣書と写真をテーブルに広げる。
予想もしていなかった話に、出された写真。
私は頭が追いつかずにただテーブルの上のそれらに釘付けになった。
「先方もね、春奈ちゃんの写真を見てぜひ会ってみたいって」
いつの間に私の写真なんて。
自分の承知し得ないところで勝手に画策されていたようで私は驚きと不快感を隠せない。
第一、私には恋人がいる。
「で、でも……」
「うちの会社の取引先の御子息でね。とても立派な会社で、一人息子だから後々跡を継がれると思うわ。私たちもこの縁談が纏まればこれからも末長くいいお付き合いができるし、
あなたのお父様も安心なさるでしょ」
「こんないい縁談なかなかないのよ?」と微笑むおばさん。
でも、言葉は暗に自分の会社の利益とそこで働く父の立場に対しての圧力が見えていた。
だからって、結婚なんて……。
彼以外とは考えられない。
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