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だけど、なかなか会えなかった。
朝比奈はお姉さんの話題が出るのを嫌がったし、学校ではほとんど接触しない。
それが異性の姉弟として普通なのかどうなのか一人っ子の俺にはいまいち理解できないけど、正直落胆した。
朝比奈がもっとシスコンだったらなぁ。
いや、それはそれで気持ち悪いか。
普段冷静沈着なあいつがお姉さんの前ではデレるという光景を想像しかけて寒気がしてやめた。
せめて、学校で擦れ違うだけでも……。
一年の教室と三年の教室は間に二年の教室がある階を挟んでいるから用事がない限り行き来しない。
会うとしたら移動教室の途中とか、学食とかだけど、それが奇跡的に全く会わなかった。
見るだけでいいんだけどな。
もう一度、彼女を見てみたいというだけなのにこうも上手くいかないものなのか。
はぁとため息が出そうになったけど、授業中だから我慢した。
今は、退屈な化学の授業。
何かの呪文のような言葉の羅列に、気が遠くなりそうだ。
しかも、昨日席替えをして俺は窓際の一番後ろの席になった。
午後一の満たされた胃袋に、温かな太陽が照るこの場所では睡魔が襲ってくるのは必然だった。
だけど、鬼教師の平井先生は寝る奴がいれば容赦なく課題を出すからここで寝落ちするわけにはいかない。
眠気を紛らわせようと窓の外に目を向けた。
その時だった。
あ……。
思わず、声が出そうになって慌てて口を塞ぐ。
彼女だ。
二階のここからじゃ小さいけど、確かに朝比奈のお姉さんが校庭に立っていた。
体操着姿で、女子たちでサッカーをしている。
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