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この時間、体育の授業なんだ。 ラッキーと思いつつ、じっとその姿を見入る。 ボールを蹴って走る姿はなかなか様になっていて。 ゴールを決めた時なんて満面の笑顔でチームメイトとハイタッチをしている。 可愛い。 太陽の下で、笑う彼女はとても輝いて見えた。 かと思えば、先に授業を終えた男子がサッカーボールをわざと彼女の背中に当てて、それに対して鬼のように怒りながらボールを顔面に投げ返す。 なかなかのじゃじゃ馬だな。 ころころ変わるその表情に自然と笑みが零れていた。 それから何回か体育の授業中の彼女を観察していくうちに、声を聞きたくなってきた。 あの快活な笑顔とともにどんな声で笑っているのか。 すごく気になった。 だけど、まさか俺からいきなり声をかけるわけにもいかない。 どうしても、朝比奈を介してじゃないとただの不審者だ。 だって、俺は向こうを知っているけど、あっちは俺のことを知らない。 朝比奈からは何とか不自然じゃないように名前を聞きだした。 春奈さん。 春の温かな日差しを連想させる彼女にぴったりな名前だった。 だけど、名前くらいが限界だ。 これ以上朝比奈に聞いたら不審がられるし、「お前のお姉さんと話したい」とストレートに言うのも恥ずかしい。 というか、絶対引かれる。
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