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どうしたものかと思案していた矢先、部活の朝連に彼女が朝比奈の弁当を届けに来た。 この時ばかりは朝比奈がうっかり弁当を忘れてくれたことに感謝した。 そこで話しかけたら逃げられたけど、面識はできたはずだ。 あとは、こっちから話しかけていけばいい。 俺は朝比奈の家に遊びに行ったり、学校で見かけたら春奈さんに話しかけた。 その甲斐あって、何度か話しかけていったらどんどん向こうも打ち解けていってくれて。 他愛ない会話だけど、それが楽しくて。 俺は自分でも認めざるを得ないくらい、確実に彼女が好きになっていた。 春奈さんはモテる。 男子とも分け隔てなく気さくに話をするし、裏表がない性格とあの容姿だ。 絶対彼女のことを好きな男は多いはず。 と予測していたとおり、何人かに告白されたけど全部断っているようだ。 だからといって、いつ何時、誰に掻っ攫われるかわからないから早く手を打ちたい。 でも、受験なんだよな。 受験前に煩わせたくないという気持ちと早く彼女にしてしまいたい気持ちが入り混じる。 多少は好かれていると思う。 俺が声をかけると少し恥ずかしそうに頬を染めて、はにかんで微笑む姿から周囲の男たちと反応が違うことくらいはわかっていた。 だから、焦らず彼女の受験が終わってから告白した。 彼女は恥ずかしそうに頷いてくれた。 あの日は本当に嬉しくて、陳腐な言葉だけど天にも昇る気持ちとはこういうことなのかと思ったくらいだった。 それから彼女の要望で俺たちは内緒で付き合い始めた。 何でも朝比奈にバレるのが恥ずかしいらしい。 逆に俺も朝比奈に「お姉さんと付き合うことになった」って報告するのも気恥かしいからそこはすんなり了承した。
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