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結絃がシミュレータ機を降りて、足早に歩いていく。颯はあわててその後を追った。
颯 「御堂、どういうつもりだ」
颯の口調は苛立っていた。
結絃「何が?」
颯 「『何が?』じゃない、さっきの訓練のことに決まってるだろ!」
結絃「さっきの訓練で何か問題があったのか。シミュレーションはノーミスでクリア。どこも悪くないじゃないか」
颯 「訓練の成績のことじゃない! 話を聞け!」
結絃の腕をつかみ、足を止めさせる颯。正面で向き合う。
結絃「何をする」
颯 「俺の声は聞こえていたのか?」
結絃「当たり前だろう。機巧研の整備班は、日本中から最高レベルの技能を持つ者を集めているのだぞ」
颯 「じゃあなぜ俺の作戦を無視した」
結絃「聞く必要がないからだ」
颯 「なぜ」
結絃「私ひとりでも敵を殲滅できる。いくらお前が機巧研の補助役の中で一番の成績をしていようが、実戦経験のない者の作戦など聞く必要がない」
颯 「パイロット一人では対応できなくなる状況だっていくらでもあるだろう! たしかにFS機はもともとは単独操縦するよう開発された! だけど、実戦を重ねる中で補助する人員が必要だと判断されたから、パイロットと補助役のトゥーワンセルで操縦するように改良された経緯があるじゃないか!」
結絃「そうだ。だから、必要なときは私が聞く。お前は、私が聞いたときだけ応えれば良い」
それを聞いて、ますます苛立つ颯。
颯 「それじゃダメなんだよ! 戦闘中いつでも正常な思考力・会話能力が保てる保証はないじゃないか!」
結絃「いい加減にしろ! 無駄な馴れ合いは必要ないと言っただろう!」
颯 「俺たちはもうペアなんだ。生きるも死ぬも一蓮托生。連携をしておかないと、いざというとき困る」
結絃は一瞬唇をかみしめて、決心したようなまなざしをしながら言った。
結絃「どうせ、お前のことも忘れる」
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