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村を出てから最初の山道を登り切ったところで戒斗はふと、隣を歩く桃太郎に尋ねた。
戒斗「桃太郎、本当にいいのか?ここを下ったら戻れねぇぞ。」
そんな戒斗の問いかけに桃太郎は少し飽きれたように答えた。
桃「大丈夫です。それに、父上のことだから一度戻ったら二度と出発させてもらえません。…ってもうこの会話3度目なんですけど。あと、その呼び方、やめてもらえませんか?」
戒斗「ん?あぁー、でもいつも呼んでんだろ。」
桃「そうですけど、桃太郎は私に男の人が近寄らないように父上が勝手につけた、いわゆるあだ名のようなものなんですから。…私は好きではありません。」
先ほど桃太郎と呼ばれた少女は少し呆れた顔でそう呟いた。
戒斗「ん~まぁ、その気持ちもわからなくはねぇ気もするけど、その格好だったら、桃太郎のがあってんじゃねぇのか?」
戒斗の言葉はまさに正論だった。
後ろで結った髪に袴、腰には刀と今の格好はどこからどう見ても少年。
桃「…これは、その、毎日剣術の稽古をしていると結局のところ袴のほうが便利ですし、履き慣れてますから。…と、とにかく、父様はいないんですから、桃太郎はやめてください。」
戒斗「まぁ、言われてみればそれも一理あるな。とりあえず、覚えてる限りは気をつけるよ。」
戒斗はそう言いながら少し悪戯な笑みを浮かべた。
桃「忘れるわけないじゃないですか。戒斗さんの頭の良さは尋常じゃないんですから…。」
桃は小さく呟いた。
戒斗「あのなぁ、そんな褒めても何もでねぇぞ。あ、そういえば、桃太郎、お前、よく蒼龍さんに捕まらなかったよな。蒼龍さんのことだから出発の時間に寝てるなんてことありえねぇと思ってたんだけどな。」
桃「あー、それは……。」
歩を進めながらも少し考え込む戒斗。
桃は再び名前のことを突っ込むべきかと悩みながらも昨晩のやり取りを説明し始めた。
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