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ステージ中央、ポツリと佇む孤島のような椅子に腰かけ、ギターを弾く。バラードを彷彿させる音色が好き。
「『嘘で固めた 日常の綻びを縫う』」
これはわたしにできる精一杯の愛の告白。愛を使ったのは一般的にこういうからだけれどね。
「『何十にも絡まった糸 纏わりつく』」
孝輔はやっぱりあの日と同じ席からわたしを見ている。冷たく燃える瞳がわたしを射抜く。
とたんに高鳴り出す鼓動が心地よくて、この熱さにたまらなくなる。燃えているような錯覚。
「『締めつける 長く細い黒髪を』」
喉を潰すんじゃないかってくらいに大声を張り上げて、わたしはここだと叫ぶ。そして理解した。
(だれかに認めて欲しかった)
確かにある私の存在を。ここに生きていると云う事実を。いくら否定されようが、わたしはここに在る。
そうでしょう?
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