教え鳥は運命を問う

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結局あれからロクに眠れもせず、今いち冴えない曇った頭を抱えてギシリと椅子を軋ませた。 入学式からまだ一週間足らずだと言うのに子供の順応性の高さには目を瞠る物がある。 女子はグループが出来つつあり、男子は仲のいい人間を見つけて馬鹿騒ぎ。形は違えど楽しんでいる様子はある。 (……まあ、心配のある人間もいるが) 複雑な家庭環境を抱えた佐久良陽(さくら よう)と、硝。 陽は腐れ縁と言うか、まあそれなりに付き合いのある妙に大人びた子供で、殊更恋愛に関しては恐らく俺よりも……と言った感じで。 一方硝は俺を避ける様子もなく、だからと言って必要以上に関わる様子もない。飽くまでも"教師と生徒の関係"というものを考え、距離を取っている。 ただ、陽とその恋人の檜扇梓(ひおうぎ あずさ)はライブハウスのシンガーで、硝が素で付き合える同年代の子供だ。 まあ、硝はそういう面では器用だから、ボロを出したりなんて事はないだろう。 (だからこそ心配なのかも知れないな) 硝の器用さにばかり目が行って、彼女が無理をしている事に気付く人間は少ない。俺だってそうだ。気付けていると思いたいだけかも知れない。 ……本当は、硝が俺の生徒になるなんて事は、とうに知っていたんだ。 彼女がそうだと知らされたのは出会うほんの少し前。 そして出会った頃にはもう、彼女は俺の中に巣食っていた。
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