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「王様のお望みとあらば、私はどこまでもお供致します。」
王様への愛故に、メイドは雲の上の誰もいない世界で暮らすことを選びました。彼女は、ずっと王様のそばに寄り添っていたかったのです。二人きりで永遠に共に暮らせる、そんな幸せなことはありませんでした。
しかし、二人だけの世界はとても孤独でした。雲の上だというのに、まるで閉ざされた籠の中の世界で暮らしているようでした。
二人は遥か昔、幼かった頃の宮殿での幸せな日々を思い出します。死んでしまった家来たち、いなくなった家族、地上でまだ生きているであろう知人たち…。メイドは自由を望むようになりました。もっと幸せに生きたい。本当の幸せはここにはない、と。
ついに二人の愛さえあれば良かった日々が傾きはじめたのです。
「王様、私は元の世界へと、地上へと帰りたいのです。」
それからの王様は、毎日のように暴れ、狂い、彼女を壊さんばかりに乱暴を繰り返しました。しかしある夜、落ち着きを取り戻した王様は涙を見せました。
「すまない、すまない。私はいったい、どうすればよいのだ…。」
ぼろぼろになったメイドを、彼は優しく抱きしめました。それでも、次の日もその次の日も、王様の乱暴は続きました。メイドは決して涙を見せませんでした。強く気高い彼女は、どんなひどいことをされても王様に優しい笑顔を向け続けました。
ある夜、王様は再び愛故の決断をします。
「これが最後の命令だ。私の願いを聞いてくれ。」
それは以前のような暴君からは想像できないような、弱々しい声でした。
「はい、王様のご命令とあらば私はなんでも致します。」
メイドは幼い頃から王様のどんな命令にも従うという教育を受けてきました。ずっと昔から既に、なんでもする覚悟はできていました。それを誰より知っている王様は、決意の宿るか弱いその瞳に彼女を映し、最後の命令を下しました。
「私を殺してくれ。」
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