帰郷

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俺は畠中勝太。 石川県大松市から東京の町田に上京してきた。 高校を出てそのまま都内の商社に就職。ごく普通のサラリーマンをやってる。 高校から付き合っていた浜田夏も東京にある保育系の専門学校に入学したのもあって、この町田で一緒に同棲していた。 明日は地元大松市の成人式。 今日2人で帰郷する。 「おっきろー!!」 「あーうるさい!」 「うるさいって…勝ちゃん、今日は大松に帰るんだよ?早く起きて出発するって、自分で言ってたくせに」 ガバッと布団を捲られうずくまる俺。 まだ1月…外も7時なのに薄暗くて肌寒い。 布団から出たくない。 「始発で行くんだから早く支度してよね?あたしは準備完了!荷物もちゃんと用意したので早く起きてくださーい!」 寝ぼけ眼で布団から出ると洗面所の前に立って歯を磨く。 そしてバタバタと部屋を片付けて出かける準備をする夏の脇で着替え。 やっと取れた有給休暇。 めっちゃくちゃ忙しくて、慣れない都会生活。 親にもまともに連絡出来なかった。 そんな中、家の事をなんでもこなして勉強も一生懸命しながら支えてくれる夏には本当に感謝してる。 賢太郎が死んだ時も、ずっと傍にいてくれた。 夏は保育士の資格試験の勉強をしながら、今は幼稚園で臨時の先生として働いてる。 幼稚園の子供達には、なっちゃん先生と懐かれているそうだ。 成人式という事もあって、やっと2人まともに休める。 俺はバタバタ荷造りする夏を見て寝ぼけながらうっとりしていた。 「何ニヤニヤしてるの?」 「あっ、いや…可愛いなぁって。相変わらず」 「早く着替えてよぉ!」 「ごめんごめん」
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