【真夏のM字開脚】

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俺は左右から掴まれてイッカクの隣に連れていかれた。1m程の鎖で足を繋げられる。 途端に物凄い重力に襲われた。 「この陣は、元信者にしか効果ないから。ままごと君の良い重りになってくれよ」 イッカクの額をつつく。 「この陣は、実用的でね。ラゴの『射程距離』なんだよね。」 ボタンを押した。 動いていた脚が一旦止まり、パソコンの起動時のように微かに唸る。 「サクタロウ、この陣は、パズルだ。」 イッカクが視線を前に残したまま言う。 足元を見るが、読めない文字が浮かんでは消えている。 「俺には読める。自分のところは解いた。 お前の、右足の先にある三角、あれだけ触れられたら、少なくとも隙を作れる。 」 確かに三角がある。 「俺が踏めばいいのか」 「いや、お前では無理だ。あの蜘蛛の様な脚が三角を移動させてるんだ。信者が触れれば結界のバランスが崩れる。 日本を出るときにマスコミに種は蒔いておいたんだが........」 イッカクの目は光を失っていない。 「やめて、殺さないで」 奥から間違えようのない声がかかった。 「ラシア....?」 無事で良かった。 足取りも大丈夫そうだ。 「私が説得するから、殺さないで」 目に涙を浮かべて、果実のような唇で。 一歩一歩近づくたび、予感が現実に変わる。 白い腕が上げられ 「イッカク、私の元に戻ってきて」 探し求めた妻は、隣の男を呼んだ。 「サクタロウ、今のラシアは普通じゃない。信じるな!」 イッカクが怒鳴る。 「しっかりしろラシア!お前はサクタロウを選んだんだ」 「でも、いつも守ってくれたのはイッカクだったわ」 せめてもの抵抗に目を瞑る。 その声で、呼ぶな。
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