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◆
「あちい....」
もたれている壁は、自然石だった。床は加工してある。蒸し暑いが石に頬をくっつけると冷たくて心地よかった。
元は外に繋がる通路だったのだろう。
壁を付け足しただけの細長い部屋だ。
鉄格子が ガッチリはまっている。
イッカクに連れられて飛行機に乗り
ペンタゴンに向かう時に、襲われた。
俺は殴られ、気づいた時はこの地下牢にいた。
陽の光を見ていないから、断言はできないが丸一日は過ぎていると思う。
イッカクは腕が立つぶん、トドメを刺されているかもしれない。
「ラシア........ミナ........」
こんな情けない俺でも、まだ家族に合わす顔があるだろうか。
◆
ラシアに会ったのは、高校生の頃だった。
バスで週に一度、病院前から乗ってくるのを見ていた。
明るい茶色の髪は遠くからでもわかったし、彼女の目が空色なのを初めて見た時には、夢に見た。
どこの国の出身なのか、ハーフなのか、俺と友達の間で度々話題にしていた。といっても見ていただけだ。
アイドルの誰々が可愛い、というのと同じ感覚。
夏休みに、そのうちの一人がゲームを貸してくれた。キャラが『病院の子』に似ているから、試してみろと。
確かに似ていた。髪の色も目の色も雰囲気も。儚げな雰囲気も。
そしてそれは、なかなかにえげつないエロゲーだった。
俺はクリア出来なかった。
そのあと、小さなきっかけがあって実際に話をしたんだ。
まさか、結婚してくれるとは思わなかったな。
「はは、何でこんなこと思い出してるんだろ俺」
もう、会えないみたいじゃんか。
あのゲーム、どんなエンディングだったんだろ。
えっと確か、ファンタジーで。秘密結社みたいなのにヒロイン攫われて。
エロいことされそうになってるのを助けたら、抱きついてきて........
はは。くっだらねー。
頬に、僅かな振動が伝わった。
意識を研ぎ澄ませる。
気の所為ではない。誰かがいる。
壁を叩いた。
『サクタロウか!?』
イッカクは無事らしい。
呼ぶと程なくドアが蹴破られた。
「よう、生きてたか」
「お前こそ」
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