【真夏のM字開脚】

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◆ 「この地下道はペンタゴンに続いている」 イッカクは先を進んでいる。 有事の際に使われるそうだ。所々に枝分かれした道があり、シャッターがある。 見た目こそ洞窟のようだが鉄骨で補強してある。矢印もある。 「ラシアは上に居るはずだ。そこでお前が来るのを待っている」 周囲が人工的な建材に変わり、鉄扉が見えた。 液晶画面とボタンがあり、イッカクが手袋を外した。 俺は、そっと近づいて液晶画面に石を置いた。 「おい、何を」 「ここ石で叩いたら、警報鳴るよな。俺がお前を倒すのは無理だけど、一緒に死ぬことくらいは出来る」 「何言ってんだ、お前。ラシアを助けに行くんだろ」 「お前、何を隠している。」 イッカクの手を指す。 「お前が指紋を残すなんておかしい。 さっきから、俺を先に行かせようとする。 いや、違うな。 お前自身がエサになっているのは、何故なんだ」 イッカクが息を呑んだのがわかった。 鉄扉が開く。 操作などしていないのに。 扉の先には、白いローブを纏った三人がいた。中央の男が拍手をする。 「なるほど、面白いものを見せて頂いた。イッカク、ようこそ。 そして、ラシアのままごとの相手。 ついて来なさい」 逆らえなかった。左右の二人の持つ銃口は俺たちに向いていた。 ◆ 「阿修羅像の、顔は三個、腕は六本だ。知ってるか?」 イッカクが呟く。 「こいつらは 俺とラシアが居たところから分派している。 アシュラを主に崇拝している点は同じだが、こいつらには........情は期待するな」 「むしろ褒め言葉だね。僕は六軸の一人だよ」 広間に着いた。 奥の御簾の内より護摩が流れてくる。 「六軸というのは、腕のことだ。一つずつ阿修羅の持っている法具の名前で呼ばれる。 以前、俺もそうだった。 教主三人に仕える六人という形を継承してきた。ラシアも........」 イッカクにとっては、この護摩も懐かしいのかもしれない。 俺にとっては臭いだけだ。 白ローブの男はイッカクにしか話しかけない。 「アンタが居なくて、腕が一本足りない。主(あるじ)様は、もう一度アンタを傍に置きたいってさ。」 「それが三人の総意のわけが無い」 「俺たちが従うのは、一人だけだ」 エレベーターが到着を告げた。
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