【真夏のM字開脚】

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部屋の中央には銀色の蜘蛛のようなものが据えられていた。 天井近くまである。 脚だけのそれは、関節を折り曲げ鋭角を天に向けては伸ばして........という運動を繰り返している。 ある角度に一対が揃うと、ポウッと鈍い光を放つ。 それは『M』の字になったとき。 銀色が光を反射して天井や壁に波のような模様を映していた。 「ミナ!!」 装置に抱かれるようにして倒れている。 イッカクが駆け寄った。 途端に床に図形と文字が浮かび上がる 「くっ!........」 まるで、見えない糸に絡め取られたかのようにイッカクは不自然な体勢で止まっていた。 白ローブの男が口の端を釣り上げる。 「やはり、一角獣の捕獲は乙女に限るな」 「お前ら、ミナとラシアに何を........」 「本来あるべき形に戻しただけさ。 アンタも、本来あるべき所に戻るべきだ。そうだろう?」 男は、阿修羅像を取り出した。 腕の一本を外し、また取り付ける。 「阿修羅が五本腕では困るし、ここも『五角形』では困るんだよ、一角さん。 アンタがラシアの元に戻る。 それで完成する。」 銀蜘蛛の一対の脚が伸びている。他の三対は同じように繰り返し、天井に光を送っている。 どこかでこれに似た形を見た........ 「阿修羅像........」 白いローブの男が初めてこちらを見た。 「ふうん、ままごと旦那のくせに気づいたんだ そう、阿修羅は三面六臂じゃない。 正確には三面と、四対の脚だ。 この装置の名前はね 『ラゴ』 阿修羅のパートナーだから。 ままごと旦那に、ご褒美あげるよ。」 そう言って、ボタンを押した。
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