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もし、軍隊や警察がやってきて、この期待をしている民衆を外へと追いやろうというのならば、きっと市民は怒りを露わにすることだろう。
世紀の一瞬を邪魔するな。遅れてきたくせに、水を差すような真似をするな。と、彼らに罵声を浴びせて袋叩きにしていたことだろう。
円盤の扉が開かれる、中から人影が見えた。誰もが様々な宇宙人の想像をした。どんな顔をしているのか。身体の大きさは。目は、口は、鼻は、手は。想像が留めなく湧き出てくる。ところが、現れたのは宇宙『人』ではなく、ロボットであった。それも人型ではなくドラム缶のような形をしていて全身が少し輝いていた。まるで、玩具のロボットのようだ。そんな第一印象である。
「皆さん、こんにちは」
ロボットは人々の前に姿を現すと、まず一言、挨拶をする。大したことないように思えるが、初めて聞く宇宙からやってきた者の第一声に、人々の間にワッと歓声が沸き起こった。生きている声とは違う機械的な声からやはり、ロボットであるようだ。もしくは、そういう生き物なのだろうか。
「そこのキミ!待ちなさい!」
ここでやっと、警官隊の登場である。警官隊は民衆を掻き分け、円盤の前まで来ると、透明な盾を構えてロボットの周りを取り囲んだ。とはいえ、逮捕とまではいかない。喋りはしたが、相手はロボットである。人でない以上、現在の法では捕まえることができないのだ。
「キミは何者なんだ!」
遠巻きにロボットを取り囲み、拡声器を使いながら警官隊を指揮している者が呼びかける。ロボットはカメラの目をグルリと水平に回転させ指揮官の方を向くと、
「私はこの星より、遠く離れた惑星に住む者です」
「遠くの惑星ということは、キミは宇宙人だとでもいうのか」
「いいえ、違います。少なくともあなた方が考えている宇宙人ではありません。私はロボットです。ロボットのような宇宙人ではなく、人工的に生産されたロボットなのです」
ロボットは電子音声で地球の言葉を喋る。実に高度な技術である。
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