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「え?知らないの?」
器用に右足だけで扉を開け、めんつゆの入った猪口(ちょこ)を手にした彼女が続ける。
「世は第二のスピリチュアル・ブームなのよ」
「へぇ……そうなんだ」
だから、検索ワードのトップにあったのか
今にもこぼしそうなそれを僕に渡すと、再び台所へ。
受け取った冷たい器と彼女の熱を含んだ指先のギャップ。
「でもさ、本来は『スピリチュアル』って意味、違うんだよね」
まだ夫婦ではないけれど、夫婦箸。
青々としたネギは不格好な輪切り。
今度、包丁をプレゼントしよう。
次々とテーブルに並んでいく少し中途半端な時間帯の昼食。
何だかわくわくするのは、自分だけだろうか?
「お待たせー、さぁ食べよっ!」
大きなガラスのボール、氷水の中で真っ白な麺が泳ぐ。
粒ぞろいの缶詰のミカンがこれでもかと並べられているのは、僕の実家ではそうやって出てくるからだ。
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