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眉を寄せながら歩き続けた。
俺は遊びで来ているんじゃない。
心霊現象、検証雑誌の記者だ。
幾度もこんな空気感を味わってきている。
場数を践んでる俺でも怯んでしまいそうな程、居心地の悪さに胸騒ぎがしてならない。
視線を感じる
…前から…後ろから…横から…上から…
風にざわめく葉々と軋む木々の音に混ざり、違うモノが鼓膜に残る。
「ねぇ、怖いよ」
「しょうがねぇだろ!?カップルじゃなきゃ検証出来ねぇんだからよぉ。バイト代上乗せすっからもう少し気合い入れてくれ」
「……うん」
始めは拒んでいるように感じた泥濘道を塞ぐ野放しの草。
つま先を進める度に道幅は広がり、まるで"おいで"と招かれているような錯覚を起こした。
吸い寄せられるように、軽く前進する足。
それと逆に進めば鉛のように重くなる身体。
長年の感なのか、脳が痺れた感覚になる中、片隅で警告が鳴り響く。
それでも俺の足は休んでくれそうにない。
坂道でもない平坦な道なのに、坂道を下りるように勝手に進むんだ。
ヌチャ…ヌチョ…ヌチャ…ヌチョ ヌチャ
ヌチャ,…ベチャ ベチャ ベチ…ャ
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