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「信二!あんた今日は家に居るの?」
台所で忙しく洗い物をしながら声を掛けてきた母親。
俺は落ちた納豆の糸を、人差し指で引っ掛け、引っ張りながら答えた。
「いや。今から倫子と出掛ける」
箸をゆっくり引っ張って切れた粘りの糸。
パックを斜めにしてご飯に落とした。
納豆の固まりがボソッと落ちると無数の糸がパックと繋がってて、とても美しい
「まさかあんた達、鬼が山に行く気じゃないでしょうね?」
「……いいだろ」
「あ、あんた!バカじゃないの!?この1ヶ月どんだけ人が死んだと思ってんのよ!!」
「だから、警察もいるだろうから安全だろ?
……それに」
──もう、あの山で人は消えない
パックを上に上げると段々細くなる糸は、次々に切れていった。
粘りのある糸が切れる瞬間は
ゾクリと粟肌立ち、口端を捻り上げながら高揚してしまう。
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