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「心配だから早く帰って来なよ」
朝食を済ませ、母親の言葉を背中に浴びながら家を出た。
待ち合わせをしていた彼女と目的の場所へ向かう。
俺達の住んでいる地区から自転車で30分程で着くとても身近な裏山、鬼が山。
「ねぇ、なんだかこの辺りって雰囲気変わったよね?
前はそんな事無かったのに、なんだか……」
「はは。如何にも出そうな感じって?」
「そうね。帰らない?気味が悪い」
「此処まで来て何云ってんの?あ、此所だ」
山の頂上へ向かう細路地の入り口を見付け自転車を近くのバス停に寄り置いた。
彼女も無言で俺に従う。
相変わらず泥濘が酷い道
最後に来た時よりも雑草の背が伸び行く手を遮る。
そう。それでいいんだ。
だから俺はこの場所を選んだんだ。
誰にも邪魔なんかされたくなくて
誰にも近付いて欲しくなくて流したゴシップ
彼女と暫く歩き、フッと後ろを振り返った。
闇に包まれ、もう戻る道など無いと無言で云われているような……錯覚に襲われる。
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