第1章

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「グニア様とまったく同じ指紋をもっていたからだ。 そして、 ばれるやいなや、 消えて犯行声明を出したのだ。 我が国では最先端技術によって、 指紋の認証が公的なあらゆる場で使われている。 統領府も例外でなくね」  彼は最後にそう言うのが口癖のようだった。 まあそんなことはどうでもいい。 つまり、 ガルド・イニエーブは指紋にいたるまで、 グニア氏の個人情報をいつの間にか盗んでいたのだ。 そして、 それほど用意周到にしておきながら、 何故死体の指紋はそのまま残しておいたのか・・・・・・。 ここに私は違和感を覚えた。 単なるイニエーブのミスなのかもしれないが、 とても世界の2大国を動かそうというほどの野望のわりには随分とお粗末な結果だったということだ。 彼の目的はもしかして別にあったのではないか。 私はそう考えた。 しかし、 何の確証もなかった。
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