第1章

14/35
前へ
/35ページ
次へ
 十分魅力的な若い笑顔は一時、 復讐を忘れさせたが、 立ち止まっている暇はなかった。 サニチェエートに挨拶もそこそこに、 叔父の待つ家へと入った。 ガルザニ叔父はいつものような暖かい笑顔で私を迎えてくれた。 「アッシュ。 まあゆっくりしていけ」  叔父の言葉はもちろんありがたかったが、 私に時間はない。 単刀直入に切り出した。 「叔父さん。 どうしてもお金がいるんだ。 どうにかして、 お金を得る方法はないだろうか? 」  叔父は煙草を軽くふかすと、 心配そうに私を見た。 「お前が、 大学で法外の五貴族について調べているのは知っている。 確かに、 秋の大殺戮にはやつらが関わっているのは周知の事実だ。 お前もそれは知っているだろう。 だが、 復讐を考えるなど馬鹿げたことだ。 もっと自分の幸せを考えてはくれないか」  叔父は私の内面を驚くほど理解していた。 だが、 私の信念の固さは理解していないようだった。 必ず母の復讐を果たして初めて母は安らかに眠れるのだ。 揺るぎない意志で私はいたが、 叔父を心配させるのは本意ではなかったので、 努めて明るく言った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加