第1章

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 これは、 ある意味彼らしいともいえるが、 本当に何の利害もなく、 このような危険なことをするものだろうか?私はまたもや引っ掛かった。 一歩間違えば、 これはゲルマンという国を根底から敵に回す危険もはらんでいたのだ。 現状はたしかに、 ガルド・イニエーブとゲルマン国は敵対関係にあるわけではないので、 彼のもくろみは成功したといえる。 だが、 どうしてもそれだけに思えなかった私はイニエーブが統領とすりかわったと疑われるだろう時期から可能な限り、 統領グニアの出した命令を詳細に調べてみた。 すると、 ある新聞の一記事に、 『グニア統領、 行方不明者の指紋データの消去を命じる』とあった。 ガルド・イニエーブの指紋の件を聞かされていた私にはこの記事が気になってしょうがなかった。 表向きは近年の人口増加によるデータの膨大化によって、 記憶装置の負担を減らすためとあった。 しかし、 行方不明者はゲルマンの人口およそ一億に対して、 わずか10万人であった。 私は何かしら気になりながらも、 投資の準備に次の日から忙しくなったので、 それ以上調査はできなかった。 投資の方法は手早く言えば詐欺の一種だった。 世界中から、 資金を集め、 集めた資金の一部を配当し、
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