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「そうでしたか。
そうとは知らずに申し訳ありません。
私は実は、
ここの屋敷に雇われているラビンというものでして、
以後お見知りおきを」
と精一杯媚を売った。
小物とはこうしたものだ、
と私は思った。
同時にアッシュ・クロフォードという本名でなくて良かったと思った。
偽名とは不思議と違った自分を生まれさせてくれるものだと感じた。
私は威厳のある顔つきで、
この館の主人に会いたい、
と告げた。
ラビンは
「主人は忙しい人でして、
屋敷内の案内程度でしたらできますが、
御礼は弾んでもらいますよ」
と渋ったが、
私が屋敷案内で良いと答え、
お金を渡すと、
それではどうぞとばかりに手招きのような不思議な動きをした。
こうして門を開けてもらい、
私は中に入ることができた。
屋敷の中はがらんとしていたが、
まばらに使用人らしき人間が働いていた。
豪華な2階建ての邸宅はゆうに一階だけで20室はありそうだった。
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