第1章

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 そして、 その首謀者5人はまだ生きている。 彼らは法の及ばない存在<法外の五貴族(アシュランテ)>と呼ばれ、 政治的もしくは力的関係において、 警察や軍隊も手出しできない存在だったからだ。 ガルド・イニエーブ、 グライア・シンシア、 バルド・ゲール・アラン、 シャルレ・ガージマス、 イポニチェ・ゴルディーザ。 私は新聞や雑誌でこの名前を見ると、 一日どうしようもない殺意と冷徹さを持った人間に変わる。 私は母を失ってから、 親戚の家で肩身の狭い暮らしをしながらも、 彼らの名前を忘れたことはなかった。 正確にいうと、 私と母が巻き込まれた事件<秋の大殺戮(オータム・バルバロッサ)>のことを聞かされたのは育ての親ともいうべき、 ガルザニ叔父からであった。 15歳の誕生日の日だった。 私は叔父に皆が寝静まった後に呼ばれ、 テーブルについた。 そこで、 母のことを覚えているか?と問われた。 私はもちろん覚えていた。 当時10歳だった私は記憶するには十分すぎる衝撃の光景があった。 けたたましい爆発音と銃声が響く中で母に手を引かれ私たちは逃げまどっていた。 一介の市民にはその時何が起こっているのかわかるはずもなかった。 ただ、 何故か戦いが始まり、
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