第1章

33/35
前へ
/35ページ
次へ
 と答えた。 男の声は動揺しているのか上ずっている。 明日から仕事を失うだろう彼の境遇を思えば哀れまずにはいられなかったが、 人の心配をしている場合でもない。 このまま警察に通報でもしようものなら、 まず疑われるのが私だからだ。 とりあえず殺人が露見する間に手短に男に尋問した。 「主人の仕事はなんだ?」 「ギンガジザス様は法に触れる手術を多く行ったせいで、 今はもっぱら裏の仕事をしている医者です。 あなたがギンガジザス様を殺したのですか?」  間違いない。 フィンガーマークはギンガジザスであり、 サムだったのだ。 「違う。 私ではない。 恐らく、 お前の主人を殺したのはガルド・イニエーブだ。 奴のことについて知っていることがあれば話せ」 「あの、 法外の五貴族の……。 たしか、 5年程前に主人が確かに手術をうけおったことがあると思います。 その時は多額の金額を得て、 専属の指紋師になったようです。 ただ、 最近は仕事がないといって旦那様も愚痴をこぼしてらっしゃいました。 それで、 最近、 新たに客をイニエーブに隠れて探していたようです」  男の声は震えていた。 それもそうだ。 死体はまだ暖かい。 ガルド・イニエーブか、
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加