第1章

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「もちろん。 いいとも。 アッシュ君。 しかし、 君も奇妙なことに興味を持つのだね。 法外の五貴族の研究なんて一文にもなりはしないだろうに」  私は少しムッときた。 が、 相手を怒らせないように慎重に言葉を選んだ。 「たしかに、 一文にもなりません。 しかし、 興味があるのです。 それでさっそくですが、 貴国の統領になりすました事件。 なんとこちらでは呼ばれているのでしたかね、 それについてお聞きしたいのですが」  ニーチェリアは自分の知識をひけらかすように笑っていった。 「ああ。 グニア事件でいいよ。 こちらでも様々な呼びかたがある。 だが、 この国では誰もあまり語りたがらない。 なんといっても、 わが国の誰もが気付いていなかった一国の長のすりかわりだからね。 いわば、 恥な事件とでもいうべきであろうか。 わが国民は極めてプライドの高い民族だからね。 私も含めてね。 君は私に感謝しなければならないよ。 もちろん、 君の熱意に負けたのだがね。 君ときたら、 一年間に300通もの手紙をよこすのだからね」 「その節は失礼しました大佐。 しかし、 どうしても、 ガルド・イニエーブと直接会ったことのある人と話がしたくて」  大佐と私が言ったことで、
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