第1章 #5

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第1章 #5

「そうだったのか。 とっくの昔に廃れた風習がまだこんなところに生き残っていたとは。 それと君の名前は?」  召使の女は少し恥ずかしそうに 「ランシアといいます」  と答えた。  まだこの国のことを何も知らなかったのだと気づいたので、 2,3の質問を彼女にぶつけてみた。 サンフラワー通りへはどこへいくのか?とか彼女の生まれはどこか?などを。 彼女は明快な道順を教えてくれた。 どうやら、 その通りには大きな食材店があり、 そこで毎日主人に出す献立を考えているそうだ。 生まれは予想通りアトランティスではなかった。 だが、 どこかはついに言うことはなかった。 言いたくなかったのだろう。 ここで一生を終えるつもりかもしれない。 少し故郷を思い出した。 故郷と一概にいっても、 私の場合は二つある。 10歳までいた廃島イエローランド。 そして、 ガルザニ叔父の住むトールキアだ。 もちろん今の場合はトールキアをまず思い出した。 だが、 イエローランドもすぐに思い出した。 緑の美しい樹木に溢れた場所だった。 それが、 あの日を境に……。 さて、 世間話もこのくらいにしよう。 グライア・シンシアを裁くチャンスが迫っている。 部屋に戻って、
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