六月の鈍色

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  何か月も鎖でぐるぐる巻きにされたまま、眼隠しと猿ぐつわをされて、 ろくな食事も与えられずに糞尿も垂れ流しだったとリポーターが言った。 手足には皮膚を削がれたり焼き鏝を押し付けられたりといった跡があり、 眼球も片方、潰されていたのだとか。 そのまま近くの総合病院に搬送されたというからたぶん、僕が今から行くところだろう。 きっと、僕は彼女の事を知っている。 検診を終えたら、会いに行ってみよう。 そう思ったら何だか少しわくわくして来て、久方ぶりに鼓動が高鳴った。 不整脈は来ない。 どうやら僕はまだもう少しくらい、生きていてもいいらしい。 六月の鈍色 fin.  image=484270288.jpg
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