第1章

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第1章

 私は夢を見ていた。機械である私が夢を見るというのはおかしな話かもしれないが、夢という言葉が一番あてはまるのだ。  最初に見たのは、希望に溢れた少女の夢だ。孤児でありながら、将来バレリーナになるために明るく健やかに過ごしている。  次に見たのは、祖国のために戦場で戦う兵隊の夢だ。銃を手に取り、仲間と供に勇敢に敵に立ち向かっていく。  他にも、奴隷、浮浪者、学生、老人、主婦と、人種と性別も年齢も様々だった。  何故私がこんなにも多種多様な夢を見るのか、不思議でならない。今度、アスナに相談してみるとしよう。  最後に、私が気付いたことを記録として記す。私が見た夢の人物は誰もが独りであった。  サイクス上層部は頭を抱えていた。  それは、新型ディーンドライブ ルクスの戦果が想定していた数値よりも低いことだ。政府から要求されていたスペックは充分に満たしていながら、未熟な操縦者のせいで性能を活かせずに破損して帰投する現状に不満を膨らませている。  このままの結果が残せないとなると、予算が下りず、場合によってはサイクスの法的活動範囲が狭まる可能性がある。それだけは避けようと、上層部の者達は1つの打開案を導きだす。  原因であるパイロットはルクスのプログラムによって変更することができない。ならば、そのパイロットを“改善”すればよいのだと。  20時過ぎ、アスナが訓練後の夕食をとって自室に戻るタイミングで私は通信を入れた。直接会えば早いのだが、私は格納庫で本体の電源を落とし、破損した装甲の修繕中だ。アスナを此方に呼び出すというのも考えたが、自宅から出てサイクスの寮生活という環境の変化で疲れているだろうから、呼び出すのはやめた。  通信の呼び出し音が数回なり、アスナが応答する。初めて私が起動した時とは違う、芯のある声だ。苦戦を強いられる現状ではあるが、積み重ねてきた経験が糧となっているのだろう。  夢の話について相談すると、アスナは興味を持ったのかネットに繋いだ端末から、夢占いのアプリを落としてきた。そういえばオリトが、女子は占いが好きだと言っていたな。改めて記録しておこう。
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