第1章-2 #2

10/35
前へ
/35ページ
次へ
4台の打棒機械と化したガードマンたちの攻撃が止むと、 弥生はうっすらと 切れた唇から血を流しながら、 笑った。 新太は弥生のこんな嬉しそうな笑顔 を初めて目にした。 ガードマンが怯んだ瞬間、 弥生は正確にガードマンの体 の左胸を突いた。 掌底といったほうがいいだろう。 その圧力は確かに内部に 脈打つ心臓に届いたようだ。 ガードマンはゆっくりと背中を地面につけるよ うに倒れた。 倒れた男は吐血している。 そして白目をむいている。 「この世界では無茶はできない」  弥生は宙に視線を彷徨わせて呟いた。 三人のガードマンは我先に、 と逃げ 出した。 弥生にとって幸運だったのは、 彼らが格闘のプロではなく、 素人に 毛の生えた程度だったということだ。 もし、 本気で三人が弥生を捕まえよう としたならば、 弥生は程なく取り押さえられていただろう。 新太は暴力の持 つ恐怖に震えながら、 それでも情夫のように未練たらしく弥生の後について いった。 非常用階段のドアを抜けると、 影は上に行ったとも下に行ったとも わからなかった。 弥生は新太に尋ねた。 新太は新太のいつもの行動を語った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加