第1章-2 #2

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電車がやってきた。 中には誰も乗っていない。 自動でドアが開く。 二人は乗 りこむ。 ドアが閉まる。 二人は車内の空席に座る。 (もっとも全てが空席だ った)電車は動き出す。 音は静かだ。 揺れもない。 新太は座席で貧乏揺すり を始めた。 弥生は横目でちらりと見ると、 手で新太の足を制した。 新太の足 はそれでも止まらなかった。 まるで、 ホッピングマシーンのように、 上下を 繰り返していた。 だが、 さすがは弥生の手といったところか。 揺れは止まっ た。 新太は不思議なことに今度は弥生の体がすり抜けもしなければ、 性的快 感も与えなかったことに落胆と安堵を感じていた。 新太は弥生の言葉を半分 も理解していなかったが、 これだけはわかった。 『世界が元に戻りつつある』 「新宿?。 新宿?」  電車が止まった。 ここは完全に前の世界だ。 そして、 新太のいた地獄だ。
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