ようこそ、僕のセカイへ

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 一定だと思うリズムでわたしの足を感覚だけで前に出す。これで歩いていると言えるのだろうか。  片方ずつ、音を手放しながらいると、急速に“赤”が近づいてきて、わたしの前で止まった。  足を出す動きをやめ、感覚だけの目で、近くの“赤”を見た。  “赤”は大きくなめらかな弧を描き、足を長く伸ばしている。  どうやら、ゲートのようだ。  歓迎するような文字も、禁止するテープもなく、突如現れた異世界への入り口のように、ただぽっかりと存在している。  何かが起きそうな予感が、あるはずの胸をよぎった気がしたが、また、わたしは足を前に出した。  あるはずの足を、感覚だけで。 .
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