ようこそ、僕のセカイへ

9/10
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 青いパンプスは、一際目立つ、黄色い「スタート」マスにいた。  奥へと続くマスに比べて大きく、文字が細かい。  マスから出ないように動きながら、すべての文字を読んだ。  前半はひらがなを用い、簡単な言葉で書かれており、後半は、ない傷口を抉るように怖さを隠した明るい文章。  茶色の丸ゴシックは丸みを含まず、わたしにフィクション感を突き刺した。  目がなければ、耳がなければ、わたしは笑って泣いていただろう。  ただ、わたしには目も耳もある。  口も足も手も鼻も、髪だって、体だってある。  だからわたしは笑わなかったし、泣かなかった。  笑えなかったし、泣けなかった。  微動だにできなかった。  そこに、“僕”が、追い打ちをかけた。 .
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!