第1章

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青天の霹靂。 物事というのは、こちらの都合など関係なしに、いつも唐突にやってくる。 先輩たちの卒業式を終えて部室に戻ってくるなり、額をピシャリとひっぱたかれた。 同時に、額に張られた紙が視界を塞ぐ。 近すぎて紙に書かれた文字を読み取る事は出来ない。 「どうしてこの僕が直々に来たのか、解るかな? 朝野(あさの)アルト君?」 コツコツと、わざとらしく鳴る靴音が俺の背後で止る。 「諸先輩方が卒業し、このサークルも君1人となった訳だ」 暖簾のような紙を指で持ち上げ、目だけで声の主を確認する。 やはりと言うか何と言うか、生徒会副会長にして執行部のリーダー、唐久多 犬介(からくたけんすけ)がそこにはいた。 執行部の証である真っ白の学ランに『副会長』と黒地に白で書かれた腕章が良く映えている。 キッチリと閉められた詰襟には優等生の証であるバッチが傾きなく止まり、背筋を伸ばして後ろ手を組む姿は、見ているだけで肩がこってきそうだ。 「君は当学園における部活の規約を読んだ事があるかな?」 ヌッと顔の横に、嫌みったらしい笑顔が並ぶ。 実に気色が悪い。 「生憎、俺は副会長様ほど勉強家じゃないんでね。学生手帳を付箋紙まみれにする趣味もないし」 唐久多が何を言いに来たのかなんて百も承知だが、俺は嫌味には嫌味で返す主義。 顔に張られた紙を引っ剥がし、それを読むフリをして窓際まで逃げた。 文面など、読まなくても大体察しがつく。 「フッ、だろうね。ならこれを期に、よく読みこむ事をオススメしよう。規約第11章、部活動規約その1。『部、または同好会などのサークルの結成には最低2名以上の所属が必要である』」 さも得意げに唐久多は言うが、そんな事は学生手帳を読まなくても、部活動に所属する学生なら誰でも知っている。 …知っているからこそ、俺は口から漏れるため息を止められない。
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