荒廃した世界。

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薄暗い洞窟、蝋燭の光がらんらんと揺らめく中で、 「なんか、本当、漫画みてーな世界になっちまったよな」と、銀髪にゴーグルをした少女が呟いた。服装は長袖にズボンに黒の長靴、そして、その手には少女には不釣り合いな、大振りなナイフが握られていた。その切っ先を手入れしつつ、少女は呟く。 「漫画って、今になっては、そんなの絶滅危惧種でしょーが、つーか、紙一枚だって貴重品なのに、漫画みてーな世界になっちまったなんて言われてもピンとこねーっすよ。隊長」 隊長と呼ばれた少女の呟きに、部下が答える、服装は似たり寄ったりだが、頭にかぶったヘルメットが特徴的だ。ちなみに、彼女の腰には二丁の拳銃がホルターに収納されている。やれやれと部下が肩をすくめるながら、隊長にちらりと視線を向けるが愛用のナイフに夢中でこちらを気にする様子もなく、部下の少女もそんなことはわかりきっていたのか、特に返答を求めたりしなかった。 隊長こと、アンズは一人、奥歯をかみしめていた。部下の軽口に気を悪くしたわけじゃない、単純にその話には触れたくなかったのだ。さっきのはあれは単なる一人ごことでしかなかった、心のうちに溜まっていた物を吐き出したかった。軽率でしかない所行と、アンズを囲うように座る部下達と板挟みになりながらナイフを手入れすることでなんとか、その感情を押し込んだ。 目の前には数十人の少女達がそれぞれ寄り集まりながら雑談に興じているが、そこに和気あいあいとした雰囲気はない、一時の小休止と言ったところだろう。アンズの呟きに答えた、二丁拳銃の少女もその一人だ。ヒリカ、その名の少女はヘルメットを押し上げながらニヘラと笑う。副隊長と言うべき存在、または、右腕とも呼ぶべき者。長年の付き合いでお互いに心根は通じ合っていた。 アンズはすっと立ち上がり、右手をあげた。その瞬間、雑談に興じていた少女達がアンズに注目する、寸分の狂いもない統制された行為にアンズが息を吸い込み、 (ああ、みんなそういう目をするようになったんだな) アンズは少女達の瞳を見つめる、真っ黒な光のない瞳だ。希望を失った瞳、まぁ、それはアンズも同じだ。それ以上かもしれない、その瞳をゴーグルで押し隠し、アンズは宣言する。 「これより、我ら部隊は悪しき魔物を殲滅する!! 心弱き者、悔いが残る者は立ち去るがよい!!」 アンズが言う。
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