左右の闘い。

2/43
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
 凡そ1年と4ヶ月ぶりに、天六ビルこと新京阪天神橋筋停車場の偉容を目の当たりにする陸攻。 昨年の夏嵐山に連れられて同所を訪れた時、乗り過ごしを防ぐ為とは言え大阪市電の車内にて嵐山の4割ゲンコツを頂戴し、頭をさすりつつ驚きの声を上げたことを、まるでつい昨日の出来事でもあるかのように思い出す。 そしてあの時、新京阪と東海道本線との並走区間にて、見事に超特急燕を抜き去ったP-6形電車こと新京阪鉄道デイ100形電車の勇姿も。 そんな陸攻の内心を知ってか知らずか、ユリネはニコニコ笑いながら口を開くのであった。 「手紙に書いてくれた通りだわ。 二階から電車が出ているなんて… 阪急って凄いのね陸攻さん」 京都方面から高架線上をやって来て、今ゆっくりと天神橋駅構内へ進入してゆく電車を見ながらユリネ。 その言葉を聞くなり陸攻が、昨年夏の自分を思い出したのは言うまでもないであろう。 なぜならあの時の陸攻は、路面電車以外の電車と高架線、そしてビルジングと一体化若しくは密着している駅など初めて見たのだ。 新京阪天神橋筋停車場はビルジングと一体化しており、阪急の梅田駅は阪急百貨店に密着している。 あの時の陸攻の認識を考えた場合、大阪の地でそんな物凄い建物を作れる民鉄といえば、阪神急行くらいしか思いつかなかったのも無理はなかった。
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!