第1章

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今日7月3日は僕の妻、村山舞の誕生日だ。 僕は仕事を早めに切り上げて、舞の誕生日プレゼントを買うために有名食器店に立ち寄った。 『プレゼント』なんて言っているが、実は先月舞が自分で選んだ物だ。 『ヤス、来月何があるか知ってる?』 『ヤス』とは僕の事だ。 結婚前は『ヤスオさん』なんて言っていたくせに、結婚して1ヶ月もしないくせに『ヤス』になってしまった。 『誕生日プレゼントはグラスが良いんだけど、私が選びたいな』 おねだりもここまで露骨だと清々しい。 『また食器?食器が好きな人は料理も上手なんだぞ』 『大丈夫、私が何作っても、ヤスは美味しいって言うから』 そんな会話を思い出しながら、食器店のドアを開けた。 「いらっしゃいませ。」 店員のお姉さんがにこやかな笑顔で僕を迎える。 この店員は舞のお姉さんだ。
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