第1章

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「はい、ヤスオ君出来たわよ。」 お姉さんの声は舞そっくりで、一瞬ビクッとしてしまう。 リボンで作られた花で飾られたその箱は、グラスが入っているとは思えない位に可愛く彩られていた。 「紙袋に入れておくね。」 お姉さんはお店のロゴが入った袋に優しく箱を入れてくれた。 「お姉さん、ありがとうございました。」 僕は袋を受けとると、お姉さんに手を振って店を出た。 実は、舞にはシャンパングラス以外にもプレゼントを考えていた。 サプライズのプレゼントだ。 本当は花束にしようと思っていたのだが、花束なんて恥ずかしくて買えなかったから写真立てを買った。 白の額縁にピンクや黄色の立体的な花がデコレーションされていて、花束の代わりと言っても納得してくれそうな物だった。 『男1人で雑貨屋なんて恥ずかしかったんじゃない?』 舞の照れ隠しの言葉が目に浮かぶ。 店員にラッピングしてもらっている間、ニタニタと笑っている自分に気が付いて、わざとらしい咳払いをして誤魔化した。
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