第1章

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遺影をダイニングテーブルに乗せてケーキを開け、シャンパングラスの入った箱を舞に見せた。 「お姉さんこんな可愛くラッピングしてくれたんだよ。」 舞は相変わらず微笑んでいる。 『どうせ直ぐ開けるって分かってるくせに……開けづらいじゃんか』 舞の悪態が聞こえた気がしてフフッと笑った。 ろうそくを立ててハッピーバースデーの歌を歌って、フー。 僕はろうそくの火を吹き消して拍手をした。 舞は髪の毛1本動かす事なく微笑んでいる。 『ありがとう』 言われた気がして微笑もうとした時、頬に無図痒さを感じた。 いつの間にか僕は涙を流していたんだ。 「あれ?僕? こんなめでたい日なのに。」 慌ててティッシュを取ったが、溢れる涙が止まる事はなかった。 自分でも分かっている。 まだこんなに舞を好きなんだって事を。 舞を忘れる事も事故の相手を恨む事も出来やしない。 ダメだと分かっていても、事故の日から気持ちが動けないんだ。
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